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OBSERVE Magazine

オジャーズ ベルンソンのグローバルマガジンでは、最新のインサイト、オピニオン、特集記事をお届けします。

コロナ禍におけるシトリックスの新しい働き方

選ばれ続ける会社になること

場所と時間を選ばず最大のパフォーマンスを発揮するために、デジタル・ワークプレスを提供するシトリックスは、お客様企業のデジタル・トランフォーメーションを推進するのと同時に、自社でも新しい働き方を始めている。在宅勤務の開始とともにどのような取り組みを行ったのか、シトリックス代表取締役社長の尾羽沢功氏と人事部長の小林いづみ氏に話を聞いた。

Citrix Japan

新型コロナの感染拡大を受け、シトリックスではかなり早い段階で在宅勤務を始めたと聞きました。

尾羽沢: 3月26日より全従業員在宅勤務体制を施行しましたが、先んじて、リニューアルセールス部門とテクニカルサポート部門では、2月から全員在宅勤務体制に切り替えました。これは年初の全社ミーティングでも強調したことなのですが、私は「社員が健康でいること」が、会社と個人の成功において最も重要なことだと考えています。

また、シトリックスは、テレワーク・在宅勤務など柔軟な働き方を実現するためのテクノロジーを提供する企業ですから、コロナ禍において弊社が先陣をきって新たな働き方を実践したいとも考えました。

在宅勤務にしたことによりどのような課題が生まれましたか。また、それにどう対処しましたか。

尾羽沢: 在宅勤務開始当初は、集中できるスペースの確保、回線スピード、緊迫した状況下でのストレスなどの課題が聞かれました。そのため、まず勤務環境を改善するために、ポケットWi-Fiの貸し出し、Citrix VPNへの接続、マルチモニター用のセカンドディスプレイといった機材の貸し出しが可能になるように、現場のマネージャーが中心となってすばやくアクションを起こしました。
コミュニケーション面では、ウェブ会議システムを通じて朝会を実施し、各自一言ずつ今日の予定や困っていることなど何でも言える場を作りました。また、チームでSlackチャンネルを作り、情報共有と感情のケアをリアルタイムで行ったり、一日の簡単な報告をメールでもらうなどして、マネージャーやメンバー同士がより細かなフォローアップを行うことを習慣化していきました。最初に全員在宅に切り替えたテクニカルサポートからは、全社ミーティングで、どのような状況でもサービスレベルを維持したお客様サポートにコミットするというメッセージを発信しました。この機会に、改めて「お客様がシトリックスを知人に勧めてくださるような『プロモーター』になってくださることを目標に、お客様のビジネスの成功を支援していく」という部門ミッションを語り、より意識的に他部門とのコミュニケーションを図ることで、営業とサポートをはじめ、組織横断の関係者間で、ワンチームでの助け合いというマインドが強化されていきました。

お客様、社内からはどのような声が聞かれましたか。

尾羽沢: コロナ以前も必要に応じて実施できるテレワーク環境を整えていましたが、従業員全員必須という中での在宅勤務は、最初からすべてがスムーズにいったというわけではありません。互いの仕事状況が見えづらい中でのコラボレーションの問題、一体感がない孤独感のリスクがありましたが、こうした課題に対しては、雑談タイムを各チームで設けて一人ひとりの声に耳を傾けていくことで、不安が和らいでいきました。そして、移動のストレスが無くなった、会議の効率が上がった、自分や家族の為に使う時間が増えたなど、うまくいっていることを認めていったことで、従業員からもポジティブな声が増えていくのを感じました。

例えば、テクニカルサポート部門では、月ごとに顧客満足度指標(ネットプロモータースコア)と生産性指標(お問い合わせ頂いたケースのクローズ数)をKPIとして管理しているのですが、どちらもオフィスで業務を行っていたときと同様の値達成という結果が出せたことも自信につながりました。お客様からのフィードバックは、一番のモチベーションになるものです。課題をチャンスに変えていくマインドで、これからもさらなる工夫を重ねながら、新たな働き方を実践していきたいと考えています。

コロナ以前も必要に応じて実施できるテレワーク環境を整えていましたが、従業員全員必須という中での在宅勤務は、最初からすべてがスムーズにいったというわけではありません。互いの仕事状況が見えづらい中でのコラボレーションの問題、一体感がない孤独感のリスクがありましたが、こうした課題に対しては、雑談タイムを各チームで設けて一人ひとりの声に耳を傾けていくことで、不安が和らいでいきました。そして、移動のストレスが無くなった、会議の効率が上がった、自分や家族の為に使う時間が増えたなど、うまくいっていることを認めていったことで、従業員からもポジティブな声が増えていくのを感じました。

例えば、テクニカルサポート部門では、月ごとに顧客満足度指標(ネットプロモータースコア)と生産性指標(お問い合わせ頂いたケースのクローズ数)をKPIとして管理しているのですが、どちらもオフィスで業務を行っていたときと同様の値達成という結果が出せたことも自信につながりました。お客様からのフィードバックは、一番のモチベーションになるものです。課題をチャンスに変えていくマインドで、これからもさらなる工夫を重ねながら、新たな働き方を実践していきたいと考えています。

今回の新型コロナウイルスは、経済や企業経営に多大な影響を及ぼしており、多くのビジネスリーダーはその対応と、新型コロナとの共生を模索しているかと思います。このような時にこそ、我々がどのようにお客様を支援できるのかが重要だと考えています。

Customer & Partner Focused(顧客とパートナーを重視すること)はシトリックスが大切にするコンピテンシーのひとつでもあり、お客様を支援するその活動こそが、長期的にシトリックスがマーケットからどのように見られるのかを決定づけると考えています。実際にコロナ禍においてシトリックスがお客様のビジネスを支援している事例を見たり、お客様の生の声を聞かせていただいたりすると、私自身も改めてお客様とパートナー様の可能性を実感します。厳しい環境下で、私たちが貢献できることは本当に意味があるということを、実際の例をもって互いに積極的に共有して、そこから学びあっていくカルチャーを築くことを心がけています。これは日本国内にとどまらず、グローバル全体で推することで、従業員全員が、今だからこそ、お客様とパートナー様の成功を支援できるという経験をしてほしいと思います。

コロナ禍で新たに始めた人と組織に関する取り組みはありますか。

小林: コラボレーションや一体感に関する懸念に対して、ロジックより感情を大切にするコミュニケーションの工夫を行いました。例えば、これまで人事部門から全従業員に向けて発信していたHRニュースを、毎月から毎週発信に切り替えました。短いメールで肩の力を抜いて目を通してもらえるように、ということを考えながら、いつでも質問歓迎であることを伝えていきました。事務的な連絡より、安心感を与えられるメッセージを入れられないか、自分自身も感情表現を伝えてもいいのでは、など考えながらコミュニケーションを図っています。また、質問があれば、質問者だけでなく関係すると思われる方々皆さんに回答の内容を共有していくことも意識をしています。

また、廊下ですれ違ったり、ドリンクプレースでふとしたコミュニケーションが起きるということが期待できない在宅勤務においては、仮想空間の中で、そうしたカジュアルな双方向コミュニケーションをどう作り出していけるかにも工夫が必要になってきます。できることから始めようと、まず、アニバーサリー月の同じ方々が部門を超えて集うランチタイム、社歴の浅い従業員と経験の長い従業員がつながるコーヒーブレイクを毎月オンラインで実施しています。ご家族の参加も歓迎とあって、お子様やペットの犬、猫も顔を出し、一緒にリラックスした時間と空間を共有できています。何年も一緒に仕事をしてきても、初めて聞くようなプライベートな一面の話で盛り上がったり、「あなたのお昼ご飯を見せてください」というアイスブレイクでは、手作りのランチを見て「わー、おいしそう!」という声と共に笑顔が広がったりします。

Citrix lunch

このような活動を通じて、オフィス空間で培った交流による一部のメンバーの信頼をベースにコミュニケーションを設計するのではなく、新たな仮想空間での信頼作りを一から作り直し、誰でも入れるフラットなコミュニケーションの基盤を構築したいと考えています。

また、従業員が率先して行っている取り組みもあります。4月から毎週継続している朝のラジオ体操には、ご家族・お客様・海外オフィスからの参加もあります。これは3月の国際女性デーをきっかけに設立された有志によるもので、従業員のエンゲージメントと女性活躍推進を目的として、ラジオ体操のほか、ヨガ、ボクササイズなどが行われました。よい従業員の経験を創り出すのは、全従業員が一丸となって、という思いが感じられます。

最後に、従業員とリーダーとの結びつきについて触れたいと思います。従業員は、直接リーダーの思いを聞きたいと思っていますし、自分自身の考えも直接リーダーに伝えたいと思っています。尾羽沢をはじめ日本のトップとのコミュニケーションはこれまでも実施されてきましたが、オンラインコミュニケーションが当たり前になった今、グローバルのリーダーと直接コミュニケーションを図る機会も作りやすくなりました。

先日、弊社グローバル人事のトップとそのリーダーシップチームが、バーチャル・サイト・ビジットと題し、各国で全社ミーティングとマネージャーとのラウンドテーブルを実施しました。これまでは、こうしたグローバルミーティングは、アメリカ本社の朝、日本の夜遅くという時間帯に設定されることが多かったのですが、今回は、日本の就業開始時間に合わせ、本社の経営陣にとって夜の時間帯に行いました。

グローバルの人事トップから日本の従業員全員に感謝が伝えられ、このような困難な時だからこそシトリックス・バリューに立ち返ることが大切だということ、そして、人事プライオリティについて話した後、質疑応答が繰り広げられました。多様性、これからのリーダーに求められる資質、シトリックスジャパンの強みなど、活発に質問がなされたのを見て、これからもこうした機会をもっと作っていきたいという思いを新たにしました。質問は、入社3か月から社歴15年半以上の方まで、また様々な部門からもあり、改めて、誰でも発言しやすい環境を築いていくことに力をいれたいと思った次第です。

今後どのようなことを目指していますか。

小林: シトリックスの2025年に向けたの戦略の三本柱のひとつである「Become a company which people select first(従業員に選ばれ続ける会社になること)」です。

従業員が魅力を感じる会社であり続けるには、ここで経験することが貢献・成長の実感につながるような環境作りが重要だと思っています。

その成功を測るひとつの指標として、例えば、従業員が自分の知り合いから誰かをシトリックスに紹介しようという動き(社員紹介採用)が増えていくことに着目しています。より多くの従業員に採用に関わってもらうことは、自身のシトリックスで働く意義も振り返る機会になり、従業員エンゲージメントにもいい影響が及ぼされる好循環になることを目指しています。ここで一番留意しているのは、シトリックスのバリューへの共感です。リモート環境が増えるからこそ、求心力となる共通の価値観は、採用においても従業員エンゲージメントにおいても一番大切と言えるでしょう。

尾羽沢: 新型コロナウイルスによって行われた世界レベルの壮大な社会実験により、家庭などで働くテレワークは、一定の市民権を確立しました。毎月最低5日間をテレワーク勤務する人の割合は、2025年までに70%に達すると推定され、この働き方は主流となりつつあります。

高い業績を上げている企業は、柔軟な働き方が従業員のエンゲージメントと定着率を高めるために、「長期的なテレワークの在り方」について検討を始めています。しかし、分散したチームがチームとしてのコミュニティと文化を作り出すことは容易ではありません。

働き方が大きく変わる中、企業は今まで以上に「従業員体験」を意識した組織づくりが必要になり、リーダーは、安定性、自信、敏捷性を発揮し、ポジティブな課題とビジネスの成果に焦点を当てることができるようにするために、重要な役割を果たします。

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